ハラスメントの視点からのヤングケアラーの問題

ヤングケアラーが直面する問題は、ハラスメントとしても捉えることができます。ケアラーの立場になって、この問題を考えてみませんか。

1.学業や社会生活への影響： ヤングケアラーは、介護のために学業や社会生活に支障をきたしやすいです。これは、教育の機会を奪われるという形での教育ハラスメントに繋がります。

2.心理的負担とストレス： 長時間の介護は、心理的なストレスを増大させます。これは、職場での精神的ハラスメント（モラルハラスメント）に類似しています。精神的なサポートが欠如することも問題です。

3.社会的孤立： 友人と遊ぶ時間や、外部の活動に参加する時間が制限されることで、社会的孤立を感じやすくなります。これは、ソーシャルハラスメント（社会的排除）とも言えます。

誰がどのように解決できるのか？

1.政府や自治体： 法律や政策を通じて、ヤングケアラーを支援する制度を整える。具体的には、休学や学費の補助、介護支援サービスの拡充などが考えられます。

2.学校や教育機関： ヤングケアラーを認識し、彼らへのサポート体制を構築する。個別の相談窓口を設けるほか、教職員の理解を深めるための研修を行う。

3.企業や職場： 親がヤングケアラーを抱えている場合、柔軟な勤務時間やリモートワークの導入を検討する。家族のケアを考慮した職場環境の整備を進める。

4.地域コミュニティ： 地域のボランティアやNPOが、ヤングケアラーを支援する活動を行う。例えば、介護の一部を代行するサービスや、リフレッシュの機会を提供する。

非認知能力を活かしたケアラー本人への対応

非認知能力とは、自己肯定感や共感力、ストレス耐性、コミュニケーション能力など、社会生活や対人関係において重要なスキルです。ヤングケアラー本人に対応する際には、以下の点が大切です。

1.共感と理解を示す： 彼らの状況を理解し、共感を持って接することが大切です。話をじっくり聞き、感情を共有することで、安心感を与えます。

2.自己肯定感を育む： 「あなたの存在が家族にとって重要であり、あなたの努力は価値がある」と伝えることで、自己肯定感を高めます。

3.ストレスマネジメントのサポート： ストレスを感じたときに使えるリラックス法や、自己管理の方法を教えます。瞑想や深呼吸などの簡単なテクニックを紹介するのも効果的です。

4.コミュニケーションスキルの向上： 効果的なコミュニケーション方法を教えることで、家族や学校、友人との関係を良好に保つ手助けをします。感情の表現方法や、問題解決のための対話法を練習するのが良いでしょう。

5.サポートネットワークの構築： 学校や地域、専門機関と連携して、彼らが必要なサポートを受けられるようなネットワークを構築します。ヤングケアラー同士の交流の場を設けるのも有効です。

ヤングケアラーの問題は、最近ようやく社会問題として、認識されるようになってきました。ケアラー本人は、自分自身がヤングケアラーであるという事を自覚していなかったり、誰にも相談できなかったり、問題が深刻になって初めて、外部の人々が気付くという事が多いようです。周りの大人が、この問題に関心を持ち、早くヤングケアラーの状況にある子供たちを、発見してあげることは、とても大切です。子供たちが、安心・安全な環境で、健やかに育っていけるように、大人や関係者は、この問題への理解を、深めていきましょう。

記事：産業衛生コンサルティング研究所　藤村裕子